蒔いた仕事が花開く!

最初の部署に戻ってくる形となった飯村さんは、いろいろな仕事を担当する中で、以前自分が担当していた仕事の成果を見る機会がありました。

三度目の異動もBluetoothに関連して、形としては最初の部署に戻ってきたことになりました。顔見知りの人もいましたが、年月が経っているので、まあ違う部署から来た人扱いですね。Bluetooth事業をテコ入れするための異動だったのですが、結論からするとうまく行きませんでした。
当時の日本は、携帯電話の赤外線通信やおサイフケータイ機能が大人気だった頃です。当時の携帯電話業界では「携帯電話で自動販売機の飲み物が買える」という目標があったそうなのですが、そこで赤外線が採用されたため、同じ無線通信をするBluetoothはメリットが少ないとみなされてしまいました。
Bluetoothは周囲のすべての方角を感知するのに対して、赤外線は機器を向けた方向に照射されるから、直感的にわかりやすいと判断されたようです。

しかしながら、Bluetoothでの提携先はBluetooth以外にも強い商品を持っていたので、そちらに取り組むことになりました。
僕の担当は、データ通信基地局のバックボーンで扱われる部品です。インターネットがとても発達して、海外のサイトも気軽に閲覧できるようになりましたけど、実際のところアメリカのサイトを閲覧するためには、データ閲覧の信号がアメリカまで到達しないといけないですよね。PC や携帯からの配線を一本一本個別に用意するわけにはいかないので、通信ケーブルが地域、都道府県、日本、というように、トーナメントのようにどんどん束ねられていきます。最終的に日本とアメリカ間をやりとりするために、ものすごいスピードでの情報のやり取りができるようになるデバイスがあり、そのデバイスに不具合や誤動作があった時にレポートをするのが僕の役目です。
デバイスの大きさは名刺よりもずっと大きなサイズです。機能としては、みなさんのご自宅にあるような無線ルータと同じなのですが、とにかく通信速度が何千倍もあるすごいデバイスです。お客様はそのデバイスを、制作側が想定していない使い方をしたりするので、原因を探ってレポートしていきます。

通信デバイスの担当をしていて嬉しかったのが、入社して三年目頃に担当していたお客様が、僕が提案した半導体を使って、素晴らしい技術を実現させているのを見たことでした。
インターネットの利用が増えて、通信量を増やそうとしても、ケーブルを増設するのってなかなか大変ですよね。そのお客様は、既存の光ケーブルを活用して、今まで白の光でしか通信していなかったケーブルに赤や緑、青と、色ごとに別のデータを混ぜて一本のケーブルで通信させる規格を作って提供していました。ケーブル内ではいくら光が混ざっても、受信側では、元の緑や赤に割り当てた情報が欠損することなく取り出せるのです。すごい技術ですよね。
開発当時、お客様はこの商品開発に真剣に取り組まれていて、とても困っていらっしゃいました。なんとかならないかなと僕も一緒に試行錯誤して、やっとできた! とお客様と手を取り合って喜んで納品したのがとても印象に残っていたんです。その仕事がこうして世界中の役に立っているのを見て、とても嬉しかったです。
その方とは今でも個人的に年賀状などやりとりをしていまして、ふとした時に話題にしていただいたり、一緒に飲みに行ったりすることもあります。仕事で助けて頂くようなこともありますし、ご縁の濃さを感じます。


お世話になったお客様と、新しい仕事に取り組んだこともありました。
光を照射して、反射して戻ってくるまでの時間から距離を測る技術があるのですが、それをゴミ箱の容量確認に応用するための仕事をしたこともありました。今は思いもよらないことが技術でどんどん実現していきますね。

また、トラブル対応も印象深いです。アメリカの某社が開発した製品にトラブルがあって、商品を一日出荷できないと、一日当たり十億円の損失が出る。今すぐ対応してくれ、という連絡をもらって、それから五時間後に飛行機に乗って海外の開発元に向かっていた、なんてこともあります。
日本側のチームと、僕のように現地に行ったチームと、あとは取引先のチームで必死に原因を探し、悪さをしているプログラムコードを見つけ、事態を収拾させることができました。その時の現地のチームの方とは今でもFacebookでつながっていて、定期的にメッセージのやりとりをします。ご家族で日本好きで、先日は姪っ子さんが来日してくださり、僕のうちまで遊びに来てくれました。こうしてご縁が繋がっていくのはとても良いですね。他にもいろいろなトラブルに対処しましたが、どれも印象深いです。

現在は、半導体の製品のお客様サポートなどが主な業務です。他の人は担当製品や担当取引先があるのですが、僕の場合は彼らがカバーしきれないところを引き受けているイメージです。契約して間もない取引先の展示会のお手伝いをしたり、社内に専任者をつけなくてもいい程度の規模の取引を担当したり、それから新卒のフォローなんかもしています。製品がビジネス化できるまでのサポートや、急な退職をされた人のフォロー、採算がとれなくなってきた製品の巻き直しを図るなどもしています。

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