派遣会社にいた時は、もうすぐ『小1の壁が来ちゃう』ってことがずっとあって、時短なら働き続けられる、と思って時短を引延ばすことばかり考えていました。成績は上がっていたし、時短でやりきるスキルも身についていました。2人目産んで、時短を引き延ばせば働きつづけられると思っていました。でもその時に子宮外妊娠が発覚してしまって。予定が狂ってしまいました。
2人目が産まれていたらちょっと違っていたかもしれない。ここで頑張らなきゃって思っていたかもしれません。小学校に通わせながらどうやって働いていけばいいんだろうって、ロールモデルが自分のそばにはいなかったんですよ。

そんな時、職種はちがったけどとても優秀で成績も上げていて、ワーママで優秀な人といえばあの人!という人がいて、私も注目していた人がいたんですが、その人が退社することになってしまったんです。結局は契約社員に降りてしまって。すごくショックだった。あれだけ成績を出している人がやっぱり降りちゃった!というのが。キャリアとしては伸びないわけですから。それがキャリアアップの転職だったら納得したんだけれど、自分だったら出さない結論だったんです。

それと、派遣法が変わった、ということも大きかったです。以前の法律ならいたい人は何年でもいられた。派遣という働き方を選んで、満足して働いていた人もいました。派遣が3年縛りになってしまって、働く人にメリットがないし、働く派遣スタッフさんの意向と法制度が合わないな、と私は感じてしまったんです。
やりたいことがあって副業としてという形で働くならいいけれど、消極的な理由で派遣を選んで働く人のほうが多い。そういう人が社員になろうと思うと大変で、でも企業は人件費削減のために派遣を取るし、そういう関係が嫌だな、と思うようになりました。

結局、私の立場上、持っている牌の中でいい選択と思われることを提供できたとしても、おおもとの雇用形態が気に入らない場合には何も手を打つことができない。
紹介した後のことは追いかけることはしないし、直接かかわらないのですが、スタッフフォローの担当者から「やっぱり社員がいいみたいなんだよね」という話を聞けば、「やっぱりそこか」と。でもこれ以上のことはしてあげられないんだよねって。

業務上、お断りすることも多くて、条件が合わないとかスキルが足りないとか。でも自分も就活の経験上わかるのだけど、そういうことが続くと自信がなくなっちゃうこともある。
そういう敏感さみたいなところは自分のいいところでもあるけど、人材業界の者としては物足りない部分でもあって、割り切れないというか。

このまま会社にいて10年後、またどこかに異動して、仕事していくんだろうけれど、その先が見えなくなっていたということも理由のひとつにあります。
それで私なりに賭けに出たんですよ。別の部署なら時短が切れてもモチベーション保って働けるかもしれない、と。上司に交渉したんですけれど、異動は適わなくて。じゃあ、もう辞めよう、と思いました。

上司からは「そうやって将来を考える賢い人から辞めてっちゃうんだよな」みたいなことは言われました。でも「どうか今後は頑張ってください!」と。(笑) 私はもういいけど、この後後輩たちにはどこから間に合うかわからないけど、ずっと働いていけるような仕組みにしてほしいですってことは伝えて辞めました。
私たちの世代って、どうしても「身を切って」みたいなことになるんだと思います。会社としてママに長く働いてほしいっていうメッセージを発信することは、今後企業の課題なんじゃないかと思います。

 

最後の部署で若いアシスタントさんと仕事をしたんです。ガッツもあってすごく仕事もできるようになっていた。でも私が時間ぎりぎりでバタバタ飛び出して退社するような姿を見て、「ママで働くのって大変そう」って思ってしまったようなんですよね。結局私が退職する前にその人は辞めてしまいました。ああ、いいロールモデルになれなかったなって、それは心残りではあるんです。
でも私自身は、ワーキングマザーになってからのほうが仕事は楽しいんですよ。強制的に自分の時間を持つことができて私にとってはそれが良かった。短い間で仕事をこなす楽しみもあるんです。

どこであっても消極的な働き方はもったいないと思います。もっと積極的にここで働きたいと思って働けたらいいと思う。
月曜日の朝が嫌じゃなくなるといいなって。サザエさん症候群がない社会になるといいなーって思います。
今の会社の女の子たちには、安心してこの会社はちゃんと実績出して働けるんだよ!っていうところを見せてあげたいと思います。(やることさえやればね)ってカッコ付きで。(笑)

向井さんは優しく、まじめで一生懸命。様々な方向から念には念を入れて考えて進む方。お話から、今まで関わってきたスタッフさんたちにも心を寄せていらしたことがわかります。きっと所属部署でも頼られていたことでしょう。そういう人の気持ちのわかる方が、それを断ち切って次のステップに進むことはきっと多くの逡巡があっただろうと、お話をお聞きしました。
でも、新しい会社で、新しい世界で、また向井さんのホスピタリティが存分に生かされることこそ、明るい未来にきっとつながるはず。サザエさん症候群のない社会、一緒に作っていきたいですね。。

 

 


向井さんに聞いた 10年後、20年後のセルフイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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