広がっていく課題の視点、できることをみつけていく

 

ちょうどそのころ子どもが幼稚園くらい。土日休みで自宅の近所で、堅い仕事につきたいとも思っていたときで、三鷹駅近くの税理士事務所に入社しました。税金や相続などの知識を学びながら、不動産業界での経験を活かして不動産オーナーさんの相続対策や相談を受けていました。
そうして資産家と言われるような不動産オーナーの方とお話するなかで、「本当の幸せって何かな」という思いが出てきて。資産をどうするか、という問題だけでなく、人間同士の相続問題といったことでも問題を抱えている方が多いんです。いわゆるお金を持っている人が必ず幸せそうには見えないんですよ。資産家の子どもがつまらなそうにステーキ食べているのと、家族で大笑いしながらマックのハッピーセット食べているのとではどちらが幸せなんだろう、と。

戦前は一家の資産は長男が引き継ぐものだったんですよ。それは長男だけがお金持ちになるということではなくて、一家の資産を受け継いで、一族もろとも引き受けて守っていくという意味があった。でも税法の改正があって、分配されるようになってしまった。資産もですが家族も分割されるようになった。

元保育園だった施設は広いお庭が。
かわいい動物たちや小さな池も。

オレオレ詐欺とかっていうのは若い人がお年寄りをだましてお金を取るじゃないですか。お年寄りと一緒に暮らしたことがあればそれはしないんじゃないでしょうか。
おばあちゃんやおじいちゃんはたまに会ってお金をくれるひとみたいな存在になっているところもあって、若い人が子育てを知らないように、死についての体験もない。大切に思っている人が亡くなる、という体験をしていないから簡単に殺してしまったり・・・これから今考えられないような問題が起きてくると思うんです。

やっぱり家族でたくさん笑える家の子は幸せじゃないかと思います。そういった問題も、本当の幸せ、心の問題になっていくけど、やっぱりそういうことは子どものころから育てていかなければだめじゃないかと。

税理士事務所で経験を積み、本当の幸せについて思いを持ちながら、株式会社りそうみらいを立ちあげ、常松さんのアンテナは現代社会の問題にも波及します。スペシャリストである不動産の知識と、豊富で計画的に蓄積された職業経験が、本当の幸せを実感できる社会にするための課題とまた、結びつきます。

 相続税は不動産を事業化していれば80%減額になるんですよ。地域貢献のために土地を有効利用して、社会もよくなって、相続対策もできればいうことない。特に、資産家の方は土地の名士である場合が多いので、地域貢献に対する意識の高い方も多いんです。
そこで、例えばおばあちゃんたちが子どもを見ててくれて、その間にお母さんたちがスキルアップなり就労なりできるような仕組みが展開できれば、と思ったのが「こひつじ共育センター」の事業構想。
子どもにとっても親以外の大人と関係を築くことができるのは、経験として重要だと思います。疑似家族じゃないけれど、ここに行けばある、という場ができればと、と考えました。
そういう場所は、小さい範囲でいくつもあるのが理想的です。一度システムさえできればどこでもやれる。そのシステムを別の同じように資産をもって迷っている方に提案することもできるわけです。

でもいきなり始めますよ、とオープンしても無理があるから、まずは人が集まる場所を作って関係性を作る必要があると思います。それで最初におやこ広場をやろうと思ったんです。上からこうする、と言ってはじめるより、やっぱり地域から人同士の関係から仕組みができていくのが理想的ですので、きっかけが生まれる場所として。そういう風潮を作っていきたい。
ただ、あるものを使うわけだから、その場所に合うやり方があるので、場所は重要です。古いものがそのまま古いままでよいときもあります。こひつじ共育センターでも、おやこ広場よりもこの建物を活かせて、オーナー様の持つ保育園にも利のある展開を検討中です。この広さを活かして勉強ができるような場所にするか、学童にするか、など考えているところです。

エリアとして、こひつじ共育センターのある2キロ圏内をサービス圏内としていますが、このあたりはとてもバランスのいい土地。都会にも近く、人もいて、商業施設もあり、畑も多くある。やり易いエリアなんです。
特に都市農家もたくさんあるので、子どもが農作物を育ててそれを売って、塾の費用にする、というような社会経験になる学習プロジェクトなども可能だと思っています。

意外にも株式会社りそうみらい立ち上げの事業構想は「エネルギー事業」だったそうです。それも社会の課題に巡り合って、そこでアイデアを思いつき、計画し、実現に向けて構想する。そのエネルギーは「教えるのが好き」にとどまらず、課題を解決してより良く豊かになっていくきっかけづくりをしたい、という情熱の表れの様に映ります。

 

 

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