自分の時間は自分のために使いたい

退職を決断した黒沢さん。資格を取得しながら、ご自分の次のステップはどこにあるのか探っていきます。

退職してから半年間はニートでした。先のことを考えずに辞めてしまったのと、退職するまで働きすぎてしまったので、働くのが怖くなってしまいました。ちょうどM社を辞める1年ほど前から美容の専門学校に通い始めていて、退職と卒業が同じくらいのタイミングでした。専門学校に通い始めたのは、私は美容がやりたいのに、自分ではその技術を持っていないのを引け目に感じていたからです。美容で何かをしたいという気持ちはずっと変わらず持ち続けていてモヤモヤしていたので、それを解消したい気持ちが強かったんです。夢ノートに自分の美容への思いを具体的に記していたことも大きかったと思います。

この半年間は、ちょうど2020年の年初、コロナが流行し始めてニュースに取り上げられるようになった時期です。それまで働きすぎだったので、働くのが怖くなってしまったのもあり、自分がやりたいことをやっておきたいなと美容に関する資格をたくさん取りました。顔タイプ診断など、イメージコンサルタントの方たちが取得するようなメイク関連の資格をたくさん受けました。

転職活動では、ウーマンポータル事業部での営業や事務局作業などの経験が強みになるのではと、出版社の求人に応募したりもしました。ただコロナ禍で求人の案件が立ち消えになってしまい採用も見送り、ということもあり難航しました。いろいろと調べていく中で、受付業務など、美容とは関係はないけれど勤務時間がきっちり決まっている仕事も検討しました。それまでのキャリアでは、自分の人生の殆どをあまりにも仕事が占めてしまっていて、自分が本当にやりたいことが何もできていない、という苦しさをとても感じていました。そういう働き方ではなく、仕事はきっちり定時までとして、その後の自分の時間を確保して、大好きな美容をやればいいかな、と思ったりもしました。

そんな風に考える反面、時間は有限な中、自分が本当に満足していない仕事に時間を費やすことが嫌だなと思う自分がいました。自分にとって価値ある時間を過ごしたいなと、美容に関わっていたいと思いました。自分にとって価値があること、美容のスキルアップができる、美容のステータスを上げることが出来る仕事は何だろうと調べていくうちに、美容インストラクターという仕事に辿り着き、エステメーカーのB社に就職しました。

エステメーカーでの美容インストラクターは、エステティシャンの先生方に商品や機器を買っていただくことが主な仕事です。商品や機器の売上が営業数字として評価されます。そのために肌理論の講習やエステの技術指導などを行います。その他にも、エステの現場での悩みを聞いてアドバイスをしたりですとか、あまり営業職という感覚ではないかもしれません。店舗の売上を増加させるためのお手伝い、というのが私の感覚に近いかもしれないです。エステティシャンやサロンに向けた仕事ではありますが、その先にいるお客様に対する悩みを聞きつつ、こんな施術を取り入れませんか、とご提案したりして、それが売上につながっていきます。

入社した当初は、美容インストラクター職ではあるのですが、その仕事よりも他の人のフォローや事務仕事が多いような状況でした。新人だからというよりは、他の方のヌケモレやフォローすべきところに気が付いてしまう、手が回ってしまうというんでしょうか。入社して3か月後の面談の時点では、あまりにも事務仕事ばかりなので辞めようとまで思っていました。
なので面談では思っていたことを全部言っちゃいましたね。「私は美容家になりたいと思ってこの会社に入りました、本も出版したいと思っています。美容インストラクターとして肌の知識やエステの技術の習得が出来ると思って入社したのに、今の仕事は事務です」と。それを聞いた社長が「もし僕が君の立場だったら、雑誌の案件なども自分が率先して取材に行き、出版社とのつながりを作ったりする」と仰ったんですよ。それで、ちょっとした取材の案件があると任せてくださったり、インストラクター業ができるように時間を作るよう配慮していただいたりして、ありがたいな、良い社長だな、と思いました。

でもこうした事を通して、自分と会社との距離感に気が付くことが出来たんです。私は自分の夢を話せば、それが叶うように会社や周りの人が何かを構築してくれるだろうと、そんな風に周囲に甘えて依存しまっていたのだと気が付きました。会社は夢を叶えるところまで保証なんてしてくれないから、会社に依存していても仕方ないな、と。B社では「私はこれもできます、あれもできます」と社内に向けてPRしているような気持ちもあって、忙しくても頑張っていた部分もありました。けれど「会社に貢献するための自分、会社のために使う時間」が全てではないなと。あくまでも自分は自分のために存在していて、私が持っている時間は自分自身のための時間です。だからそれを大切にしていきたいな、と思ったんです。
ちょうどプライベートでは友達が結婚していくようなタイミングで、自分を見直す心境だったのも後押しとなり、個人でのSNS発信とパーソナルメイクの活動を強化していくことにしました。美容のプロとは何だろうと考えた時、やはり美容でお金を稼ぐことだな、と。だからいつか美容家になるのだから、美容で自分が稼げるようになりたい、というのもパーソナルメイクの活動の原動力となりました。

次のページ

 

1 2

3

4