綺麗になりたいエネルギーが、その人を一番綺麗に見せる

ご自分で道を切り拓くことを決意した黒沢さん。尊敬する人の励ましがターニングポイントだったということも教えてくださいました。

Instagramはもともと趣味としてプライベートを載せるものとして取り組んでいました。美容学校に通い始めた頃から美容ネタが増えてきていたところ、尊敬する方に「アルバムみたいにSNSを使ってもしょうがないから、ビジネスツールとして使った方が良い」と言われ、そこから意識して投稿するようになりました。B社に就職した頃からだったと思います。

パーソナルメイクは、始めた頃は友達や知り合いがお客さまでした。キャンプでご一緒した方にメイクしたりとか。最初は気が引けてお金をいただけなくて、尊敬する方にめちゃくちゃ怒られました。美容学校時代はワンコインメイク500円、なんてやったりもしたんですけど、その500円すらいただけませんでした。

今は二足の草鞋状態ですけど、やっぱりメイクの仕事をしている時が一番心を打たれますね。メイクをされる側の人って、ほとんどの方が私と初対面で、期待と不安を抱いていらっしゃるんですよ。本当に綺麗になるかな、この人に任せて大丈夫かなって。その不安を私に託していただいてメイクをした時、その人の顔がパッと輝く瞬間が素敵です。その人がメイクをする目的を持っていれば持っているほどより素敵に輝くと思うんです。

先日、エステの指導で出張があったのですが、先方のお客様の施術モデルさんが、ちょうど旦那さんのお誕生日だったんです。雑談で、私がメイクもできるという事を話したら、メイクもして欲しいと強くご希望されました。時間は本当ぎりぎりでタイトだったのでとても悩んだのですが、旦那さんのお誕生日だから綺麗になりたい、という気持ちがすごく伝わってきて。やりましょう、と言ったらすごくすごく喜んでくださいました。仕上がった後もとても喜んでくださって、その時のその方の顔が本当に綺麗で……。こんな風に喜んでいただけるのだったら、私の休憩時間なんていらないなと。「綺麗になりたい!」「旦那さんの喜ぶ顔が見たい!」というエネルギーが、その人を一番綺麗に見せてくれるんだなと感じました。

メイクをした後にお客様の顔が輝いているのを見ると、なぜだか泣きそうになってしまうんです。この時の出張では、帰りの飛行機の中で本当に泣いてしまいました。泣きたくなる時の気持ちを言葉にするのはすごく難しいんですけど。「なんて綺麗なんだろう」と思います。それがたまらないですね。

メイクは本当に、人を美しくすることの究極だな、というのが、メイクが好きな理由ですね。あの時の喜んでくださったお客様の顔、本当に世界中の誰よりも綺麗なんです。

人が輝く瞬間って、やっぱりその人自身の個性を生かすことがその人自身を輝かせているんです。たった30分しかないメイク時間の中でも、お客様がメイクに何を求めているのか、たとえば周囲からはクールに見られている方がいたのですが、施術前にお話を聞いたら、可愛いと思われたいだろうな、というのに気が付いて、汲み取って可愛い仕上がりにしたら、もう、すごく顔が輝くんですよ。メイクで人の心が動く瞬間を見ると、メイクをやっている価値が高まるなと感じています。

私にとってのターニングポイントは、尊敬する人との出会いです。キャリアのお話で時々出てきた方で、中島さんという方です。知人に誘われて行ったキャンプの主催者の方で、最初は山小屋の用務員のおじさんかな、くらいに思っていました。キャンプ中、転職したいと言っていた男の子に対してすごい勢いでお説教されていて、私は怒られたくないからあの人に近づくのやめておこう、なんて思っていました。でも無意識のどこかで、この人と会っていたら何かいいことがある、と思っていたんでしょうね。その後もキャンプがあるからおいで、と誘われたりしていくうちに、いろいろなことを相談できるようになりました。就職して大人になればなるほど、本当に信頼を置ける大人の人って、そうそういないんじゃないかなと思うようになりました。そういった意味で、中島さんには自分のことを素直に相談できるので、私にとって貴重な人だなと思います。

夢ノートを始めてみたらとアドバイスしてくださったのも中島さんです。「かんなは言葉にするよりもイメージ型のタイプだから、なりたいイメージをいっぱいノートに貼ってみろ」と言われて。確かM社に入社して1年ほどのころだったので、ウーマンポータル事業部に異動したいとかも書いたりしました。

私自身、美容が好きという気持ちはあっても、それを仕事にするということは1人ではできなかったと思うんです。中島さんに相談して、怒られながらも、「かんななら出来るよ」と背中を押してくださいました。当時は資格も何もなかった状況で、美容の情報発信なんかを始めても、この人何やってるの、変な人、としか思われなかったと思うんですよ。その中で、出来るよ、出来るよ、と励ましてくれる人がいることってなかなかない事なのではないかと思います。中島さんが主宰するキャンプに参加すると、参加者のみんなの前で自分のやりたいことをプレゼンする時間があるんですね。そこで「美容家になる」とプレゼンするのがすごく恥ずかしかったんです。誰この人、って感じで。でもみんなの前で言い切ったからには、ちゃんとやらないとカッコ悪いな、という気持ちににも後押しされました。仲間同士でフィードバックをもらえるのも嬉しかったですね。

副業としてパーソナルメイクの仕事を始めましたが、業界全体のお給料が安いので、それこそパリコレのメイクをしたり、大御所の女優さんにメイクをするような人でも、そんなに儲からないんです。それなら美容の世界ではどんな人が儲けているのかというと、自分で本を出版したりだとか、メディアに出たりだとか、自分の情報の発信の仕方を工夫している人です。それはウーマンポータル事業部の時にも感じていました。そういう業界の状況が分かってくると、技術者であることと、儲かることって違うんだな、というのを感じました。


だから私自身は、筆で稼ぐ(美容の技術だけで稼ぐ)というよりは、自分の市場価値を上げて、美容の専門家として知見を語ったりですとか、技術をここぞという時に使って、短い時間でお金を稼ぐ。そうして好きなことをしたい、ということを今一番考えています。 美容について私なりに色々考えてきて思うのは、美容は最終的には心の豊かさだと思うんです。なくてもいいものだけど、あることで人の心が豊かになるというのでしょうか。私は趣味で美術館巡りをするのですが、それに近いような気がしています。
もっとみんながリラックスできる、心地いいと思えるような美容を作りたいです。美容は綺麗な人がやるためのものではなくて、万人が楽しめる、自然体でいられる、そうした美容を目指していきたいなと考えています。


まとめ

美容について語るとき、嬉しそうに目をキラキラさせていた黒沢さん。印象的なエピソードを教えてくださったときは、思い出しただけでも涙が滲むとのことで、黒沢さんの感動の量が筆者にも伝わってきた気がします。「美容は心地よくて、リラックスできて、安心できる」というポリシーが、黒沢さんの活動を通してもっともっと広がって行ったらとても素敵だなと思ったのでした。
(文章:吉田けい)


黒沢さんに聞いた
10年後、20年後のセルフイメージ

 

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