どん底から勉強すると、世界の広さが見えた
後藤さんのターニングポイントは、まるで映画のような大学受験でのサクセスストーリー。学ぶことの楽しさの原体験について教えて頂きました。
人僕の人生のターニングポイントは大学受験ですね。僕、大学受験中に偏差値が40上がったんです。最初は偏差値30台でしたから。その頃は何にも考えていなかったんじゃないかな。
いざ勉強を始めて、いろいろやってみたいと思った時、それを否定しない先生が背中を押してくださったのも大きかったと思います。予備校では偏差値が上がるとクラスが変わりますよね、そうすると付き合う人も変わります。そうやってどんどん階層を上がっていって、大学受験が終わるころには天狗になっていました、まだ19歳でしたから(笑)。
天狗の絶頂で大学に入ったら、自分より千倍も頭がいい人たちがたくさんいて度肝を抜かれました。三年ほどお世話になったゼミの先生にあれこれ議論を挑むのですが、いつもコテンパンにされてしまいました。その論はあの本に書いてある、それは何某の意見が、と即答されてしまう。でも一回だけ「そうかもしれない」と言われたことがあって。僕が先生から柔道で言うところの有効をとることができた、唯一の回でした。
上には上がいて、世界は広く、「知の巨人」は偉大なのだと思い知りましたね。
また、僕が入塾・就職した予備校には、文化教育研究所という機関があり、予備校の教員や卒業生に向けて広く門戸を開いていました。そこで定期的に集まって、ドフトエフスキーなんかを研究します。僕もそこに参加して学ぶことを継続していました。
「汝自ら求めよ」という言葉のように、自分から学ぶ精神をこうした活動から培って、今も自分に深く根差しているんじゃないかなと思います。
ご自身の大学受験での強烈な体験から、人事という立場を通して教育の可能性をずっと追求してきた後藤さん。経営目標にコミットしつつ、社員一人ひとりと向き合い、心配し続けているご様子は、人事ならではのスタンスなのだと感じました。ご家庭には可愛らしい娘さんがお一人いるそうで、お父さんとしては「好きなことで生きていってほしい」「アウェイの状況でも実力が出せるようになってほしい」と考えているそう。「大きくなっても、子供の頃は何が好きだったか覚えていてほしい」と、娘さん専用のメールアカウントをつくり、そこに一週間の出来事を書き記したメールを送っているのだとか。いつかそのアカウントをプレゼントしたいと笑う後藤さん、とても素敵な取り組みを著者も真似したくなりました。 娘さんの学校のPTA会長に就任、業務効率化を成功させるなど、ここでも人と組織の改革を行っているそうです。
(文章・写真:吉田けい)
後藤さんに聞いた
10年後、20年後のセルフイメージ