人事スピリッツ!
~価値ある仕事をしている人にこそ活躍してほしい~

後藤 幹芳(ごとうみきよし)さん

埼玉県出身。大手予備校にて教務として生徒の進路指導にあたるが、大人の教育研修に興味を持ち、研修・人材派遣会社に転職、外部向け研修の営業となる。外部研修を開催するうちに、一回限りの外部研修ではなく、継続的に人材育成に取り組みたいと考え、中堅の調査会社に転職、何もないところから人事部立ち上げを行った。

プライベートでは娘さんの学校のPTA会長を務めている。


大人を、現場で、教育したい

ご自身の大学受験の経験から、予備校の教務としてスタートした後藤さんのキャリア。経験を積むにつれ、人の育成に関わりたいという想いが研ぎ澄まされていきます。

キャリアのスタートは大手予備校でした。生徒の進路指導をするチューター、教務です。

自分自身が大学受験を通して大きく変わったので、その経験を活かしたかったと言えばいいでしょうか。

教務の仕事は、生徒と面談をして、小テストや模試の結果を見ながら進路を決めていきます。それを何年かやっていると、その子の先というか、最終的な見通しが、早い段階で見えてくるようになってしまいました。

四月に入塾して、一ヶ月ほど勉強する様子を見てみますよね。勉強への姿勢、面談中の受け答え、授業中の様子。そんなものを見ているうちに、だいたい伸びしろはこれくらいだな、それなら何某大学を狙えるな、と読めてしまう。
映画「ビリギャル」のようにごぼう抜きに成績が上がるようなことも、まあ全くないわけではないけれど、滅多にはないです。大多数の子はだいたい、僕の最初の予想の範囲に収まってしまう。
そうやって生徒の伸びしろを自分で決めて、そこに生徒自身を当てはめて満足してしまうことの繰り返し。これではつまらないな、自分がやりたかった教育ではないな、と思いました。型に当てはめるのではなく、もっと大逆転するようなことをしてみたい。そんなことを考えて、二社目に転職を決意しました。

二社目は、もうなくなってしまった会社なのですが、研修や調査、人材派遣が主な事業の会社でした。今ほど残業など厳しく言われなかった時代なので、労働環境はあまりよくなかったですね、残業も多かったですし……。三年間勤めましたが、十年分くらい働いたかもしれません(笑)。

会社は小さいけれど顧客は大手が多く、大手の会社の方の思考というか、注目するポイントや、配慮しなければいけない社内の仕組みなどを間近で見ることが出来て、とても勉強になりました。

外部研修の担当として、顧客企業内で研修実施するようなこともありました。しかし、顧客企業側からすると、外部研修はその時限りのイベントだという色合いが強くなってしまう場合もあります。
受講者が研修後にどんなふうに変化していくのか、変化はどの程度持続するのか、そうしたことが分からない。研修が終わった後、外部が長くフォローできるような仕組みではないし、それなら顧客企業の担当が必ずフォローを継続できるかというと、それも難しい場合もあります。彼らも他の仕事もあって多忙なので、この研修のことばかり考えていられるわけではないですからね。
外部研修とはそういうものだと言ってしまえばそれまでなのですが、本当はそこが大事なのに、という想いがだんだん強くなってきて……。
もっと一人一人の社員が入社してから一人前になるまで、しっかり見守って育成することに挑戦したくなりました。企業の中に入って、自分自身で教育する場が欲しくなったんです。それが現職への転職のきっかけの一つとなりました。

現在は中堅規模の調査会社で総務人事を担当しています。経理は別部門として独立していますので、総務人事ではほとんど一人親方みたいな状態ですね。僕の他にも総務に一人、システムに二人の社員がいますが、だいたいのことは自分でやってしまいます。電球も交換しますし、工事の立ち合いもしますし、人事系もすべてやります。総務のおじさんです(笑)。管理系役員がいないので、いろいろなことを僕が決めて、承認をいただくスタイルですね。

実際自分で人事をやるようになって、教育によって人が変わるのは面白いなと実感しています。

次のページ

 

1

2 3 4