二度目の独立、選んだのは行政書士だった

会社員としての経験を積みつつ、もう一度の独立に向け、また社会人学生として精力的に活動していた織井さん。「ちゃんとした」仕事をしたい、という志を熱く語ってくださいました。

少し話が戻りますが、ITOKIN時代に入学し、N社時代に卒業した早稲田大学の商学研究科では、人材ゼミに所属しS先生に師事していました。修士論文はキャリアをテーマにして執筆し、そのために他社にインタビューをお願いしたりもしました。人材ゼミでの学びは、人事や教育の仕事でとても役に立った一方、H先生主宰の起業ファクトリーや、行政主宰のビジネスコンテストにも積極的に参加していました。

新しい事業の準備や勉強ばかりしていましたが、特段マナー講師が嫌になって、もうやりたくないというわけではないんです。現に今でもマナー研修のご依頼はありますしね。ただ、せっかくMBAが取得できる環境に入れたので、しっかりとしたビジネスを立ち上げてみたくなっていたんです。そして離婚関連ビジネスを調べていくうちに、行政書士という資格があることを知りました。行政書士は公正文書としての協議書作成などを請け負うので、離婚協議などの場面でお二人をサポートすることができるんです。行政書士の資格を持ちつつ、夫婦カウンセリングを実施されている方もいました。私はもうカウンセリングの資格を持っていたので、「行政書士の資格があればやりたい離婚ビジネスができるんだ!」とすぐに資格取得を決意しました。

マナー講師としての一度目の独立は、どうしても私の中でふわふわしたイメージなので、二度目の独立は有資格でバシッと決めたいな、と。ちゃんとした──プロとして社会に貢献して、社会に私の存在意義があるような仕事をしたい、そのための行政書士資格でした。特に女性が独立して仕事をしていると、言い方は悪いですが下に見るような方もいるんですね。そういう時にも、有資格者の私が持っている知識は揺らぎないものなんだと保証してくれるものだとも思います。行政書士としての仕事はご紹介がとても多いです。お客様が少なかったころは交流会などにも行きましたが、ご依頼につながることはほとんどありません。弁護士事務所の秘書をしているCA時代の友人がいろいろな案件を紹介してくれるうちに、お客様がどんどん増えていきました。

現在は、おりい行政書士事務所と、とも経営研究所の二本立てです。まず2015年、N社在籍中に開業したおりい行政書士事務所では、行政書士として、法人のお客様に対して建設許認可、風営法の営業許可、法人設立の書面作成など行っています。知人の伝手で、小さな企業様の記帳代行もしています。
建設許認可には、都内の案件は大きく分けて大臣許可と都知事許可の二種類があるのですが、大臣許可の法規制が数年前に緩和されました。その規制緩和による新しい基準に基づいた案件を取り扱うことが多いです。専門的な設計ソフトの使用が必須の許認可では、専門家の方と連携して申請することもあります。風営法は、スナックやバー、キャバクラなどの営業許可のための書類申請を行います。いろいろな伝手のお仕事を引き受けていくうちに、業務内容も多彩になってきました。個人の信頼できる方のご紹介に限り、外国人労働者の滞在・就労の許認可などをお引き受けすることもあります。

強みとしては、建築許認可において法改正による新基準というマニアックな分野を得意としています。ですが、もっともっと専門知識をお持ちの先生や事務所はたくさんいらっしゃいますし、そうした方は取扱件数がとても多いです。そうした方と比べると、私はまだまだ強みとも言えない程度だと自負していますので、さらなる強力な強みを見つけられたらいいなと日々模索しています。

続いて、2016年開業のとも経営研究所では、主にキャリアコンサルタントとしての仕事をお受けしています。行政書士として開業しつつ、マナー講師やキャリアコンサルタントのご依頼も引き続きお受けしていたので、業務内容によって事業を分けたイメージです。
現在のとも経営研究所のメイン事業は、電話カウンセリングサービスに携わるカウンセラーさんのカウンセリングですね。在宅で働いているカウンセラーさんお一人につき月二回、面談を実施しています。カウンセラーさんは70名ほどいらっしゃるので、のべ150回程度をスタッフと手分けしてお受けしています。電話カウンセリングの利用者は、人に言えないような悩みを打ち明けられるような方が多いので、カウンセラーさんも相談内容に引きずられてメンタルや体調を崩してしまいがちです。そうしたケアや、カウンセリング内容のレクチャーやコンサルティングなども行っています。

時には新しいカウンセラーさんの採用や、教育プログラム作成を受け持つこともあります。この会社の経営者は私と同い年の女性で、女性が在宅電話カウンセラーとして働くという新しいスタイルを提唱していることに共感し、お手伝いさせていただいています。
他にも、キャリアコンサルタント養成講座や、マナー、接客、カウンセリングやコーチングなどの研修をよくご依頼いただきます。特に前職の美容メーカー時代のつながりで、美容室からのご依頼いただくことも多いですね。研修会場で別の研修のご依頼を頂戴することもあります。

スタッフは両事務所合わせて三人おりますが、必要に応じて外注をお願いすることもあります。依頼件数は多いのでアルバイトのような契約でもよいのですが、外注でお願いする方が先方に時間の拘束がないので、双方のワークスタイルに合っているなと感じています。

いろいろなタイプの人がいますが、私は飽きっぽいというか、興味がいろいろで、新しいことをやりたくなってしまうタイプだと思います。今の仕事も行政書士、カウンセリング、マナー講師と、全然違う三種類を並立させている状態です。それぞれ脳の使う場所が違うし、お付き合いする人も全然違うので、自分の中でうまくバランスを取りつつ、飽きずに取り組めているのかなと思います。

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