今が大事
おひとりで子育て、お仕事をしながら、必要な勉強や資格取得を続けて来られた辰さん。心理学系以外にも様々な分野での研鑽も積まれてきていますが、大事にしたいのは「今」とおっしゃいます。
どこの学校を卒業していて、どこの会社で働いていたか、ということを表に出さないことが私のすごく大事にしているところでもあるんです。そこで評価をされたくない。
だから、いま目の前にどんな学歴職歴の人が来ようと、その方の今の状況がどんなだろうと、私の中でそれをOKにしていることが、関係性やその場の安心安全の一つだと思っています。外的キャリアで決めないということが、相手の安心安全にもつながるんですね。
例えば大学進学とか、親御さんが熱心だったり経済環境がいい人が、そこにたどりつける可能性が高い時代じゃないですか。
若いときの状況の多くは、自分だけの力でないことが多くて。そう思ったらやっぱり大切なのは今だと思う。今その人は何が好きで、今何に興味があって、今何を頑張っているかが大事。外的なキャリアよりも内的なキャリアに注目しているし、私も内的なキャリアをいっぱい培おうと思っています。
内的キャリアの高い例というと、これは私の先生の例えなのですが、映画釣りバカ日誌の浜ちゃん。浜ちゃんは内的キャリアの高い人っていうイメージなんですって。
浜ちゃんは何をやっている人ですか?と聞かれたときに、「会社員です」じゃなくて「釣りがすごく好きな人です」って言ってしまいますよね。外付けの物をその人とするか、中からの物をその人とするかの差があると思います。内的キャリアが整っていると、比較的なんでも楽しくやれると思います。
NPOの理事の仲間たちのことも、勤め先や役職などは知らないことも多いです。話の中で、そうなんだなぁと思うことはあっても聞かないし、どんな仕事でも偉いとかすごいとかは思いません。
私自身も、キャリアコンサルタントをしながら会社に許可をもらって朝、お掃除の仕事、夜には花屋さんや居酒屋さんでバイトしていた期間が8年くらい有ります。私は恵まれていたほうだと思いますけれど、やっぱり子ども3人の学費とか、大変でしたからね。
これからNPOの事務所では理事がそれぞれ自分のできることをやってくれる約束をしているのですが、本当に内容は何でもいいんです。ワークショップする人もいればお掃除する人もいる。
今そういう風にできるのは、その8年があったからだな、と思っています。偉い仕事も偉くない仕事もなく、拘束されている時間一生懸命やるだけ。そこに私が働いた分の価値が付くだけだと思っています。
例えば、朝1時間つくれそうだな、と思って朝お掃除の仕事をする。時給は900円。900円の仕事をするのではなくて、できるだけのことを一生懸命やっていたら、時給は上がるんです。時給は私が決めていると思っているんですよね。給料が上がるというのはそういうことだと思う。
会社でも同じで、やれることを一生懸命やる。必要な資格が取れた。そしたら給料が上がる。勉強したことを活かしてみんなの話を聴き始めて、給料が上がる。会社のあちこちで相談業務ができるようになる。そうするとまた給料が上がっていく。
逆に、業務が増えて私の傾聴が広げたい活動ができないな、と思って契約社員にしてもらえば、会社からもらうお金は下がる。でも、やりたいこと、他の仕事ができるわけです。
これから傾聴だけでやっていきたいと思っているけれど、うまく回らなくなったら、事務所の前のスーパーでレジをやりたい。そこでまた自分のやれることをやって、作っていけばいい。できると思うし、楽しいと思います。