働くことは、自分と出会うこと
~大切な思いを見つめて今を重ねていく~

辰 由加(たつ ゆか)さん

NPO法人スマイルアップ 代表理事
傾聴カウンセラー協会 代表

東京出身。結婚後、自営家業のお仕事の傍ら3児を出産育児。離婚後、一般企業等で事務を担当しながら、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント等の資格を取得。キャリコンサルタントとして社内外で活躍。
カウンセリング臨床体験を重ね、さらに学びを深める中でカウンセリング技法の一つである「傾聴」にフォーカスしてのやり方・あり方を体系化し、自身の講座で展開。傾聴を拡げるための活動拠点として、2019年8月に東京調布市に事務所を開設。


今がターニングポイント

「ターニングポイントは、4つ。命について考えた恋人の死と心臓病を持つ長男の出産。離婚、そして今。」とおっしゃる辰さん。「傾聴」に係る仕事に専念することに決め、それ以外のお仕事を辞められるその少し前にこのインタビューは行われました。「今」というターニングポイントはどうやってきたのでしょうか。

今の肩書はといわれると、傾聴カウンセラー協会の代表、NPOスマイルアップ協会の代表理事、企業と契約しているキャリアコンサルタント、ということになりますが、十何年間、私は基本的にはキャリアコンサルタントで食べてきたと思っています。

平日昼間は会社で仕事をして、終業後にカウンセリング、土日を中心に講座という生活でしたが、平日の仕事を辞めて、NPOの事務所を拠点に傾聴だけでやっていこうと思っています。

そのきっかけには、55歳になったということがあって、自分の体のこと、会社での仕事や立ち位置が変わってきたこと、両親のこと、があったと思います。
両親は夫婦二人で住んでいるので、月の半分くらいは実家に帰ると決めています。やはりそれだと会社の仕事に制限がでることもある。自分の体もいつまで今のように動くかわからない。もっと自由に活動できて、親のことも守れるようにできないか、と考えてNPOの理事の仲間に事務所をもつこと、私がそこに常駐することを相談しました。

もう一つ、NPOが設立から5年たったということ。設立当初、理事たちと2年たって回らないような会社は辞めましょう、と言って始めたんです。今、5年たって今まで事務所がなかったからできなかったことや、地域での活動ができるようにしておきたいと思いました。
事務所を持つってすごいなと思いますよ。手続きや話をしにいく先々で、もういろいろな活動先を紹介されました。傾聴カウンセリングとは違うのですが、傾聴ボランティアや病院などのメディカルカフェの中で傾聴などができるかもしれないな、と。地域に根差すという意味で、事務所を構えることは力があります。

自然に、なんですよ。会社でのキャリアコンサルタントの仕事だけでなくて、講師や講演などもここ3年くらいかけてだんだん辞めていきました。最初は仕事として収入のために、子ども達のために、と思って受けてきた仕事だけれど、だんだんと子どもも大きくなってきて、そういうタイミングだったのだと思います。
でもあえて、何年後に仕事をこうして、事務所をもって、と思っていたわけではないのですが、私の中がそこに行くようになっていたように思います。

傾聴が大好き、これを広げたい、と思っているだけで、何となくそれだけで仕事が成り立つような方向に、いちいちの自己決定の中で向かって行っていたような気がします。
日々の中で、傾聴をお伝えしたり自分自身も勉強を重ねる中で、いつも自分が言っている「相手の中に答えがある」ということを、「では私の中の答えは?」と自分にも問いながらきました。
いま、パズルのピースがピチッとあったな、という気がしています。

傾聴の仕事だけでやっていこうって思わせてくれたのは、理事をはじめ周りのみんながいてくれたから。後5年、60歳まで、一般的にリタイアと言われるまでの5年間を、『自由に動いていい時間』としていただけたと思って、その時間は今まで傾聴を学んでくれた人、大好きでいてくれる人、地域の人たちへ、いろんなことへの恩返しの時間だと思っています。精一杯やらせていただきたい。精一杯やります。

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