大企業で新しいことを始めるのは、想像以上に時間がかかる!

念願叶い入社したシューズメーカー。広告担当の枠を超えて、積極的な行動が、大きな成果に結びついていきましたが、大企業ならではのジレンマにも気づかされます。

シューズメーカーでも最初は派遣からスタートです。
広告担当として、今までの経験で培った広告会社でのノウハウを全力で出し尽くしました。念願叶って鼻息荒く仕事に取り組んでいたので、恐らく社内では少し浮いていたかもしれません(笑)。

おかげさまで結果にも繋がり、入社から2年後に正社員登用されました。その後も部署は広告や広報関連でしたが、社内に向けて、新商品開発の自主提案を繰り返したんです。
メーカーには入社したものの、業務範囲は変わらず広告でしたからね。自分から動いて関与できる範囲を広げていくしかないだろうと、提案しつづけました。
そんな時、商品開発部門が主動する社内プロジェクトのリーダーから、マーケティング担当をやってくれないかとオファーをいただき、参加することになりました。

そして、チャンス到来です! このプロジェクトを気にかけていた当時の社長が、メンバーとの宴席を主催してくれたんです。この機会を逃すまいと、宴席の機を見て社長の対面に席をうつし、自主企画をプレゼンしたんです。

この宴席でのプレゼンがきっかけで、紆余曲折を経て新商品のプロジェクトが立ち上がりました。最初の提案から数えると既に4年半が経過していましたね……。本当に時間がかかりました(笑)。

提案者である僕はマーチャンダイザーに抜擢され、後にブランドマネージャーにも任命されました。おかげさまで一時期は年間10万足を超える売上を記録してヒット商品になり、ショップチャンネルにも出演して1時間で約1,000万を売り上げた事もありました(笑)。ずっとやりたかった、ゼロから新しいものを生み出すこと。その願いを叶える事ができました。

そこで思ったのが、実際にやってみると、大会社で新しいことをやるのは、とんでもなく時間がかかり、労力がかかり、そしてとんでもなく制約が多い。メーカーだから簡単に新しいものが生み出せる訳では全くないんだ、という事を学びました。

そして大きな企業ではまた別の問題がある事にも気付かされました。昇格の問題です。
自分で言うのもおこがましいですが、社内では一定の成果や実力も認めていただき、評価されていました。けれどそれが人事評価となると、一足飛びに昇進、出世! のようにはいかなかった。一定の立場までは完全に年功序列なんです。
新卒入社して生え抜きでずっと勤めて、昇進の順番待ちの人がたくさんいる。
中途入社はその人たちを押しのけて行かないといけないけど、評価する人たちもまた年功序列。その人たちの順番を抜かして昇進、出世となると、なかなか難しい状況でした。

メーカーに身を置きながら更に大きな事をやるには、立場も必要となります。でも、社内の等級を一つ上げるのにあと何年かかるんだろう、と考えると、「ゼロから商品を生み出す」という当初の念願も果たしてしまったこともあり、どこか萎えてしまった自分がいました。

成果を上げても、凝り固まった人事制度の中で順番を待つしかない。そんなことにモヤモヤしていた時期に、知人の紹介でWEBメディア会社の社長と知り合い、話しているうちにPB(プライベートブランド)事業をやらないかと誘われました。この会社が持っていたヘルスケアのWEBメディアは当時月間1000万人以上アクセスがあり、ヘルスケア領域でも一、二を争う大手サイトでした。そのメディアが手掛けるレコメンド型のPB事業はとても魅力的で、収益も見込めます。

当時37歳。社内での仕事にジレンマを感じていて、しかも転職するにも難しくなってくる年齢です。そんな時に、自分で興した事業を成功させている社長本人に「三年後の自分は何が出来ているか?」と問いかけられて、言葉に詰まってしまいました。

このまま今の会社に留まっていても、3年後に大きな成長が出来るのだろうか? 下手したら何も変わっていないかもしれない。でも、一緒にやらないかと提示された事業は面白そうで、待遇も今より良い。何より社長自らこんなに熱心に誘ってくれている。こんな機会はそうそうないだろうと、転職を決意しました。

 

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