頑張れても頑張れていなくても時間は過ぎて行く

キャリアの上でのターニングポイントについて、現在の仕事観と一緒に語って下さった山浦さん。今だからこそこの心境になった、という経緯を詳しく伺いました。

ずっと中国と関わることを軸に据えて仕事をしていましたので、6社目の音楽教室の会社で中国出張したことが私にとって印象深いです。ちゃんとアレンジできた、通訳できた、という成功体験が自信につながりました。私は中国のことが好きですけど、好きだけでは一緒に仕事をする相手にとっての価値にはならないですよね。それを相手にとって価値のあるものとして提供できたことに安心したり、自信を持ったり、嬉しかったり、という感じでした。誰かに中国のことを紹介したりアテンドしたりするときは、なるべく黒子のように目立たない存在でいたいんですよね。このインタビューで回答し始めたときには、私というフィルターを通して中国を見てもらうことに意味を見出しているイメージだったんですけど。いろいろ話しながら整理できた今、黒子になって、その人が自分で体験して感じ取ることを妨げないように、必要なところだけサポートしていくような活躍を自分はしていきたいなと思っています。

子どもを産んだこともターニングポイントではあるのだろうなと思います。就職して3年目での出産なので、仕事を手放したという実感すらなくて。どうしたら仕事が楽しくなるのかを探っているうちに子どもができた、こちらを優先するしかないか、みたいな感覚でした。子どもはもし授かれたら産もう、くらいの感覚で妊活していましたが、こんなに早く妊娠するとは自分でも驚きでしたね。子どもを産んだ体験そのものは今も自分の人生の中ですごく大きいです。仕事に対しては、いい意味で責任感がなくなったな、と感じています。自分一人で完成させようと頑張ることを求められているわけではないと思いました。現在の仕事のウェブメディアの更新も、自分には難しい仕事と感じ落ち込んだ時期もあったのですが、マイナスのことを考えても辛くなってしまうだけで仕事はすすみません。私が頑張っていても頑張らなくても、周りの人たちは人たちで頑張っている。私もチームの一員として、自分が自分のできる「最高」を、その日その日で体現していくのが大事と捉えるようになりました。

仕事ってマラソンみたいだなと思います。以前の私の考え方だと、全力を出し切ってないものは仕事じゃない、だから全力を出せるようにしなくちゃと、焦りみたいなものが常にありました。でも自分にとっての満点を叩き出せない日も時間は過ぎて行くので、ひたすら、とにかく、やるしかないんだ、という感覚になってきました。足を止めないで走り続けるイメージが、マラソンに似ているなと。ずっと続いて終わりがないから、うまいことペースを作って、止まってしまいそうなときは体力を温存しながら走り続ける。そうやって自分をいたわりながら、でも止まらずに走り続けるのが大切なんだなと感じています。

世の中にはカリスマ的な人、その人単体として価値を発揮する人もいますが、私はそういう人物ではないなと思っています。目標や理想や構想を持った人の手となり足となるというのでしょうか。今の会社のコンサルティング事業があり、SaaS事業があり、ツールを作った人がいて、営業部隊が足を運んでツールの良さを説明して。私は広報やオウンドメディアで、どうしてそのツールが必要なのか、どんな役に立つのか、ということを世の中に語りかけていく。そうした役割分担でないと成し遂げられないものを会社は実現できる、その一員に私はしてもらっているんだな、という実感があるということなのでしょうか。フリーランスの時に感じていたものとは少し性質が違う気がします。

今までの私は「この仕事を成し遂げた先で自分が得られるものがイメージできない」「たぶんこの程度のスキルなら組織も私を必要としていないだろう」と考えた時、それなら仕事を変えようと転職を選択していました。自分は入社1年目の新参者であることが多く、すぐ辞められるポジションだったからもあるとは思うのですが。今の会社はすこし違う感覚で、「あなたもチームメンバーの一人だよ」とメッセージをいただいている気がするんです。会社という組織の中に、初めて自分も入った感じというのでしょうか。自分は「自分なんかいてもしょうがない」と思っていても、会社からしたら、「今は求めていることを発揮できていないけど、辞められるよりはいてもらった方がいい」という判断もあるのかもしれないですよね。それなら止まるのではなくて、求められている水準からしたら最低限かもしれないけれど、自分なりに最高のアウトプットを求めて試行錯誤してみようと思いました。自分も会社員なのだな、と実感しています。同じ会社の仲間として、上司や同僚を間近で見ていたい、というのもあるかもしれません。

まとめ


中国の現場と関わることを軸に仕事を模索し続けてきた山浦さん。また「日本では、息をするためにもお金がかかる」と強い危機感を持ち、自分の市場価値を高め、お金を稼ぐことを意識して来られました。少しずつ想いを実現していったことがキャリア観にも変化をもたらし、今の山浦さんの礎となったのだろうなと思った著者なのでした。
(文章:吉田けい)


山浦さんに聞いた
10年後、20年後のセルフイメージ

 

山浦さんのSNS: https://twitter.com/shanpu_yaxiang


 

 

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