人のために働く、誰と働くかが大事

今まで常に居場所を感じてこなかったとおっしゃる江頭さん。でも仕事を辞めたいと思ったことはなかったそうです。そして、いわばアウェイな環境の中で人と協働し仕事を形にしていく中で、ご自分の強みをふたつ発見されました。

教員になった時も女性研究者支援のコーディネーターになった時も、流れというかめぐりあわせではあったのですが、大変だったとは思っても2年目はやらないという気持ちにはならなかった。何かをやっても、よっぽどのことがないと辞めるという選択がないのです。サラリーマンとして働いていた時も研究をしている時も、しつこいです。やーめた、とはならないですね。

ここが自分の居場所だということを感じた経験は少ないのですが、次から次へとやらなくてはいけないことが降ってくるので、それをやっていると日々に追われていく。たぶん、なんでも断らないんですよ。原則飲み会も断らないし、来た仕事もよっぽどじゃないと断らない。後から自分の能力が足りなくって、「いやー、しまったなぁ」ということは何回かありますけど……。

自分では無理だと思ったら、人の助けを借りながら他人を巻き込みながら、なんとかします。
小さい頃から周りの様子はよく見ていますね。俯瞰してみるようなタイプだと思う。その感覚で、このことならこの人だ、という人を見つけて臆せず助けてもらいます。そこが多分私の一番の強みだと思う。できなかったら人に聞く、助けてもらうということに抵抗がないのは、今になって思えば、ずいぶん私の生き方を楽にしてくれたと思います。

もうひとつの強みは自分と人を比べないことだと思います。比べるなら昨日の自分や去年の自分と比べることにしています。生きてきた背景や条件が異なっているので人とは比べようがないのです。人と比べてもできないことはできない。自分でできなければ、できる人に協力してもらいながら、何かをやり遂げていく。

そういう意味でも、働くということは私にとっては人とつながることだな、と思っています。仕事を選ぶときも仕事の内容よりも誰と働くかっていうのが私にとっては重要ですね。杏林大学でこの仕事をやろうと思ったのも、このトロイカ先生たちのために働きたいと思ったから。やはり様子を見て、人は選んでいます。誰と働くかは一番大事にします。私にとってはこの人と仕事してみたいという気持ちがが、一番のモチベーションなんですね。

これからAIが発達して働き方が変わると言われていますが、私は、実はそんなに根本的なところは変わらないんじゃないかな、と思っています。病院は顕著で、やはり人と人が対面することはずっと残っていくだろうと思います。5分でも10分でも絶対に先生と直接話したいですよね。それが安心だと思います。AIの発展で、より情報が取りやすくなっていくとしても、最終的には人と人との関係が大切なのではないかなと私は思います。私自身のこの先の働き方も、「この人と働きたいということが大事」、ということは変わらないと思います。

字数の都合で省かせていただいたお話の中に、生後4か月のお子さんを連れてゼミの旅行でフィンランドに行けなかったことが今でも唯一の心残り、というお話がありました。零下のところに赤ちゃんを連れていくのはどうなのか、という周囲の意見に、フィンランドの赤ちゃんは零下で生まれて育っているのだから大丈夫でしょう、とおっしゃったのがとても印象的でした。
江頭さんのこれまではもちろん、常に悩みながら進めて来られたとは思いますが、周辺なりの自由さを楽しんでいらっしゃるように私には映りました。こういう働く大人をたくさんのこれからの若い方に知っていただきたいなぁ、と思い、江頭さんの生徒さんたちを少しうらやましくも思います。


江頭さんに聞いた 10年後、20年後のセルフイメージ


 

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