「パワハラ傾向振り返りシート」の誕生
厳しい状況でも「修行だ」と捉え奮起してきた平井さん。偶然の出会いと修行中の経験が、事業にユニークな視点と新しいサービスをもたらすことになります。
有限会社グローイングは、2006年に有限会社法が廃止される直前に立ち上げた会社です。法廃止直前に有限会社名義を持っていたら何かいいことがあるんじゃないかと法人登記しましたが、ほぼ休眠状態でした。X社を退職し、グローイングの事業を再開したということになります。その際、自社サービスに適性検査の事業も加えました。
グローイング本格始動当初の事業は、当時ソーシャルメディアを使った採用活動が流行の兆しを見せていたこともあり、ソーシャルメディア活用のコンサルティングと合わせ、採用適性検査や研修の販売をしていました。日本経済新聞に取材されたり、大手企業と組んでセミナー等を開催するなどは実施できていたものの、なかなか上手く立ち上がりませんでした。色々と数年模索を重ねた後、ご縁もあって採用コンサルティングの顧問先として3社ほど人事部長の名刺を作っていただき、現場で採用や評価制度の構築等でのお手伝いをさせていただきました。適性検査を現場で活用していると、手応えとして「適性検査は採用以外にも使えるんじゃないか」という考えが次第に大きくなってきました。では採用以外の何にどのように活用したらいいんだろう、と考えた時に、参加していたビジネス勉強会の飲み会で、偶然にも社会保険労務士の湯澤悟さんと隣の席になりました。湯澤さんは社労士としてパワハラ予防の研修やコンサルティングをされていて、実績も多数お持ちの方でした。お話を聞くにつれ、「パワハラの分野で適性検査は役に立つな」と確信し、パワハラ向けの診断ツールを一緒に開発することになりました。そうして出来上がったのが管理職教育用Web適性検査「パワハラ傾向振り返りシート」です
「パワハラ傾向振り返りシート」は、先述の渡辺徹さんがEQ JAPAN社を出られた後に設立された会社で開発した「行動価値検査」という検査をエンジンにしているのですが、どんなアウトプットにすればいいのかを決める時は苦心しました。検査の対象は管理職を想定していたので、彼らが自分自身にパワハラ傾向アリと自覚してもらうには、どんなコメントや表があればいいのか、より響くのかを試行錯誤しました。自分自身の研修などでのお客様のやり取りからヒントを得たりすることもかなりありましたね。完成した「パワハラ傾向振り返りシート」を見て、これは時流に合っている、需要があると確信できました。手前味噌ですが、「パワハラ傾向振り返りシート」を通して、管理職が自分自身の持ち味を生かしたパフォーマンスを発揮するためのヒントも提供できていると思います。リリースして2年と9ヶ月になりますが、2021年1月末時点で大手企業を中心に113社、12,000名以上の管理職の皆さんにご活用頂いています。
弊社では、当社の企業ミッション「一体感のある組織づくりで、組織と個人の成長に貢献する」の実現に向けたアプローチとして、適性検査、研修、コンサルティングを織り交ぜ、クライアントのご要望に応じてご提供しています。管理職教育用Web適性検査「パワハラ傾向振り返りシート」は現在の事業の主軸で、ミッション実現のためのツールの一つになります。このミッションは、私自身が組織との一体感を感じている時に、自分自身の成長も組織としての成長も実感できることが多かった、という経験に裏打ちされています。一体感のある組織が世の中に増えて行けば、多くの人が充実感・成長感をもち、自然に社会も活性化していくものだと考えています。その一助となりたいという思いがありますね。
「パワハラ傾向振り返りシート」の他、ミッション実現のための適性検査サービスとしては、最適配置診断(上司と部下のマッチング)や採用検査があります。先述の行動価値検査はエンジンとして共通していますが、検査のアウトプット(結果表示)はそれぞれ異なります。また、ストレスやモチベーション、リーダーシップ等、クライアントの興味・関心によって、適性検査の結果データから提供する示唆も違ってきます。研修効果をあげるため、組織傾向の把握は欠かせず、検査と研修はセットで実施することがほとんどです。コンサルティングは更にその先、組織改革までお力添えさせていただくこともあるのですが、稼働時間を多く割かれるため、今後はノウハウを提供し、パートナーの育成に力を入れていきたいと考えています。
「パワハラ傾向振り返りシート」の導入にあたっては、パワハラ予防とその仕組みづくりを通して、企業の組織風土づくりの足掛かりとなるようなご提案もさせていただいています。ご要望としては「全社的にパワハラ予防意識を醸成したい」というものと、「パワハラ行為者もしくは疑いのある特定の誰某さんを何とかしたい」というご要望であることがほとんどなのですが、後者の場合、対象者は業務上では確かな実績がある優秀な方だ、という場合が少なくありません。「パワハラの事実はあるけれども、コストをかけてでも反省してもらい、軌道修正し、自社で引き続き活躍してもらいたい」ということなんです。パワハラをしてしまうような人は、言い方や指導方法に難はあれど、そこには何かしらの意図があることが殆どです。そしてその意図は本人が大事にしている仕事に対しての向き合い方や価値観だったり、また会社・組織にとって大切な価値観に根差したものだったりするわけです。そうすると、それらの価値観を浸透させきれていないという組織の問題や、指導を受けた側がそれらの価値観を受け止め切れていないことから指導に納得感を持てず、結果として指導をパワハラだと感じてしまうというケースもあるんです。背後にある教育的な意図や価値観を考えることで、パワハラをパワハラだけの問題としては扱わず、組織風土づくりのきっかけにします。単なる労務トラブルと片付けてしまうるのはとても勿体ないんです。ただただ表面的なパワハラ予防指導だけではなく、アプローチを工夫することで、組織風土づくりにお役立ていただけるようにご提案しています。 再生ファンド時代に私を怒鳴りつけたプロデューサーは、私が揚げ足をとってしまったとはいえ、怒鳴りつけ、一瞬ですが胸ぐらまで掴もうとされていましたので、今の時代からすればハラスメントと捉えられてもおかしくないですよね。でも実績はおありでしたし、人間的には魅力的な方で、ファンも多く、ホテル再生への思いもあるからこそ、当時の私の態度へのお怒りだったとも思います。いろいろな職場を経験していく中でいろいろな人に出会い、彼のように、ハラスメントかもしれないけれど他の魅力があったり、とても優秀だったりする人にたくさん出会ったことが、自分の中で財産になっているんじゃないかなと思う時があります。だから今の仕事で、ハラスメントをしているとみなされてしまう人に検査結果フィードバックのためにお会いすると、「ハラスメント行為を除けば、あの時のあの人にそっくりだ! 勿体ない!」と感じるんですね。彼らにはビジネスパーソンとしての凄みはあるのですが、先述の通り、教育の意図や、そもそもベースにある価値観などで部下とコンセンサス(合意)をとりきれていないから、ハラスメントと言われることがあるんです。彼らにはそんな欠点もあるけれど、魅力的な部分もある。魅力的な部分だけを見ると、凄い人だな、と単純に感心してしまうような方もいます。ハラスメントに敏感になる今の社会の状況も分かるし、熱を込めて言ってしまう彼らの気持ちも手に取るように分かるからこそ、彼らに刺さる言い方が出来ているのかなと思います。