仕事は緻密な準備、大胆な行動、正しい検証

ビジネスには旬があり、自分は旬が過ぎた、と仰る中島さん。現在の仕事へのスタンスと、新しい展望について教えてくださいました。

ターニングポイントとしては、やはり31歳で裁判と脱税を背負い暴君だった頃と、47歳で中島建物を始めた時でしょうか。今もその局面だと感じています。僕はビジネスには旬があると考えていまして、僕の年齢、55歳というのはバブルを生きた世代になります。いま不動産業界で活躍しているのは、40代前半から30代前半くらいの年代です。僕ら55歳は役員か、総務や嘱託でしょうか。もう現場とは畑違い、バックヤードにいる人間なんです。

そうすると、一人で運営している会社ですと、業界の方と話をするのは20代くらいの方になるんです。20代の子が偉そうな口ぶりで電話に出たりすると、なんだこの若造、と思ったりもします。うまく話題を合わせて乗り切りますけれど、旬が過ぎたなと感じます。

何十億にもなるような取引となると、さすがに50代の方が出てきますけど、それ以下ですと20代、30代の方がどんどん取引をしている、という世界です。

仕事の旬が過ぎた時に、じゃあ今の僕の旬で何十億の取引に基盤を移さなければいけないかというと、そうした焦りはありません。

僕がもし引っ越し物件を探すなら、僕は僕に、自分の家を探してもらいたいと思っています。自分で自分に家を探してもらいたい、そう思えるようにならなければ、お客様は僕に魅力を感じないのではないでしょうか。そして僕がそう思い続けているなら、いろいろな方からご紹介のご縁は絶えないと思います。

そうやって考えていたら、僕が楽しいと思えることを仕事にしてみたらいいんじゃないかと思い始めました。僕はキャンプが好きなので、僕のこだわりのキャンプグッズを作ったらいいんじゃないかな、と考えています。今はいろいろ企画して、試作品をどこにお願いしようかなという段階です。41歳の時に立ち上げた会社は物販の会社だったので、その時の経験が生きていますね。

僕の仕事はほとんどが準備だと思います。緻密な準備をしないといけないですね。取引などで人に会うのは行動です。準備と行動をすれば、必ず結果は出ます。それに対してしっかり検証して、また準備があります。PDCAとは少し違うと思います。福祉団体の会長さんから教えて頂いた言葉で、「人間の行動は綿密な準備、大胆な行動、正しい検証だ。これをやっていけば、物事は前に進むし、解決できる」というのがありまして。これだな、仕事ってこういう事だな、と深く習いました。

何も考えずに準備もしないで、思い付きで発言している人は受け流します。そういう人は大胆な行動をしているつもりでも世界観が狭く、結果に対しても間違った検証をしていたりします。なので今でも物事をじっくり見て勉強させてもらっています。自分自身も検証をするときには他の人の意見を素直に聞けるよう心掛け、これがダメだったんじゃないか、もっとこうすればよかったんじゃないか、と検証を整えます。次の準備の時には、いろいろな方にお話を聞きながら準備していきます。そういうことを繰り返していくのが仕事です。

最近は「役に立つ」という感覚がすごく強いです。会社を大きくして、社員を増やして、それが何になるのか。今の不動産にしてもキャンプにしても、それを通して何の役に立っているのか。人間は地球と共生していて、その中に問題があると考えたら、まず地球ありきですよね。地球と共栄、共存して生きないといけないのに、人間は地球に立ち向かって生きてしまう。そうではなく、地球との共存に役に立つことをしようよ、という気持ちが僕の中でとても強くなっていますね。キャンプグッズ開発にしても、プラスチック製品は森に還らないですから、素材を工夫していく必要があります。人間の役にだけ立って、地球を壊すようなことをしていたら、結果的に人の役に立っていないんです。自分が考える精一杯のことをやって、それが後から地球や誰かの役に立てばいいと、焦ることなく次の事を考えています。

僕も昔は暴君で血気盛んで、瞬間湯沸かし器だなんて言われていましたけど、精神的に穏やかになってきたなと感じています。今までは自分がやってきた準備が絶対正解だと思い込んで、それで行動していたんですから、まさに暴君でした。正しい検証なんてしないし、反省もしません。自分が思った通りにやればいい、と好き放題やっていましたから。まるで暴君、と、遅いけれども気づきました。人にどれだけ尽くせるか、役に立っているか、という事を考えた時に、人に生かされているという事が返ってくるかなと感じています。


人並ならぬご経験をされてきた中島さん。そうしたご自身のご経験を、キャンプを通して子どもたちを育てる活動などに活用されているのはとてもユニークで魅力的でしたね。子ども向けのキャンプも、大人向けのHUB CAMPも、どちらもぜひとも参加してみたいなと思った筆者なのでした。
(文章:吉田けい)


中島さんに聞いた
10年後、20年後のセルフイメージ

 

株式会社中島建物 http://www.funaboriapartments.com/

WORLD HUB CAMP https://www.worldhubcamp.com/


 

 

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