森の中での出会いは特別になる
キャンプが大好きで、子ども向け・大人向けのいろいろなキャンプを主催している中島さん。その魅力と活動を始めた経緯も詳細に教えてくださいました。
少し遡りますが、新会社を設立した頃、会社運営だけではつまらないなと、キャンプ活動も開始しました。会社ではそれまで学んだことを実験する場だと捉えていましたが、更に実験をしてみたかったんです。もともと父がキャンプが好きで、子どもの頃はずっとやっていたんですよ。スキー学校にも入って、冬と春はスキー、夏はキャンプという日々でした。大学のゼミもキャンプを専攻にしましたからね。子どもたちを集めたキャンプを開催して、夏休みに5泊6日を3セットやっていました。そのほかにも八ヶ岳のガイドもやったりしましたね。山岳部ではなくて、人間中心のキャンプの方です。
そうした経験から、子どもを対象にしたキャンプを開催することにしました。キャンプ運営をしながら、言う事を聞かない子どもに対して人はどう動くか、どうしたら子どもたちが自分で考えて行動できるようになるか、を見ていました。自分で考えて行動すれば、いう事を聞かない子たちも、いろいろと考えるようになるんですね。どうやったら薪を割れるかな、これで割れるかな? 薪を割れるものを探してみよう、と問いかけたりして。キャンプには必ず登山のプログラムも入れます。小学生だからみんな辛いですよね、僕はその中でも一番ダメなチームを担当します。計画は事前に立てずに、山の中で子どもたちと一緒に立てるんです。あそこまで行ったら休憩しようよ、ごはんはどこで食べたいかな、とか。時には僕がケガしたふりをして、「もうダメだー!」なんてうずくまると、子どもたちが大丈夫? 大丈夫? と心配してくれるんですね。そしてみんなちゃんと行動してくれるようになります。弱音を吐く子が弱音を言い出すよりも前に僕がやると効果的です。そして、みんなで歌を作りなら頂上を目指すんですね。歌詞を考えて、メロディを考えて、1小節ずつ足していく。そうして頂上に行って、帰りは完成した歌を歌いながら手を繋いで帰ってくるんです。その様子を付き添いのお母さんはずっと見ていて、めちゃくちゃ面白いキャンプだったな、と仰っていただけたりもしました。リーダー格の子がいるようなチームは、俺が一番、僕が一番と、目を血走らせて我先に行くので、帰りはぐったりしてしまうんです。それに対してダメな子のチームが、誰も脱落せずに歌いながら手を繋いで楽しそうに帰ってくる。落ちこぼれがいないように工夫しながらキャンプを実施して、その実施している様子を子どもたちに説明して見せます。社会に出ても一緒、自分で考えて行動することが大切なんだよと。当時参加した子たちは、今その意味が分かってきた頃なんじゃないかな。社会で生きることはキャンプと同じ、簡単なんだよ、という世界ですね。
キャンプは子ども向けだけではなく、会社の社員研修にも活用しました。社員全員が家族のように仲が良い会社、というわけではなかったので、もちろん行きたくないという社員もいましたよ。でも実際に行けばリラックスできるので、参加する社員が多かったです。それで、その研修に子どもと社員を入れるパターンを作ってみました。キャンプの場でボランティアとして活躍してくれる子が、将来うちの会社の社員になってくれたらいいな、と思っていました。それらが現在開催している大人向けのキャンプ、HUB CAMPにつながってきています。
中島建物を継いだ当初から、キャンプは続けるよ、はっきり宣言していました。そこにいろいろな方が来てくれて、僕の経験、裸の王様理論だとかを話したりしました。キャンプで話すというのがポイントです。街で会う人と、森の中で会う人って全然違うんです。街で会う時は、30分から2時間程度のアポイントだとか食事だとか、1回あたりはそれくらいの時間でしかないじゃないですか。その回数を重ねたとしても、それほど深く交流できるわけではないですよね。それよりもキャンプで一晩、まる一日一緒にいたりなんかすると、全然違うんですよね。朝起きて夜寝るまでのストーリーの中で、一日のサイクルを一周見てから話すんです。だからお互いをすごく身近に感じられて、街の中で再会すると、ただならぬ関係のように感じられるんです。みんな親しくなれますよ。結婚する時には相手を春夏秋冬1シーズンすべて見ろ、それでその人の人となりが分かるから、というのと同じですね。キャンプをやるとみんな仲良くなるよね、という世界です。
誰かと一緒にいると、人はできるだけ自分のいい面を出そうとしています。そこを潰すのではなく、いいと面を引き出してあげようと心がけています。悪い面のところは、逆に見えなくしてあげればいいんです。都心よりも森の中の方がそういうことをやりやすいです。あれこれ難しく出来ないことでも、人は森の中だったら助けてくださいって素直に言えますしね。
キャンプの最終日は掃除の日なのですが、いい加減な人はやはり掃除からは逃げていますよね。前向きな人、これから伸びる人はきれいに掃除をします。伸びる人、伸びる子は特に自分で掃除箇所を探しています。指示したところが終わったら、次はここ、次はここって掃除をしています。雑巾を毎回洗うのが面倒だからバケツを持ったりしてね。指示したら次はどこやりますか、と聞く人もいますが、自分で掃除箇所を探すことが出来る人を、僕は頭のいい人と呼んでいます。
キャンプでは、参加者にメリットよりもベネフィット、を意識しています。メリットは単なるキャンプのいいところの具体例で、ベネフィットはキャンプを通して得られる変化の体験そのものです。
ボランティアで協力してくれる若者やHUBCAMPスタッフたちにも、日常とは違う変化での実体験や実践は貴重な経験と説明しています。キャンプを開催するごとに、参加者に自分の好きなことの実践や夢の環境を組み入れた企画を提案してもらっています。
変化の体験を上手く捉えた若者は、やはり自分で掃除箇所を探し広範を掃除しています。確かにそんな若者は企業での活躍も素晴らしく出世もしていきます。