必殺技は「笑顔と挨拶」!
~人と人として向き合い、
自分が起因となって役立てる人を増やしていきたい~
松本 崇嗣(まつもと たかつぐ)さん
東京都在住。東京外国語大学卒。学生時代の留学生との交流を通して、外国人人材の就業支援に興味を持ち、人材業界に就職。1社目では新規開拓の飛び込み営業、法人向け人材紹介、人事採用および労務担当などを経験。2社目ではハイレイヤー人材のヘッドハンティング・求人紹介を担当。3社目ではエッセンシャルワークに特化した人材会社にて営業課長を務めている。
会社名や肩書ではなく、人と人、個人と個人として向き合って対話をすることを大切にしている。
趣味はキャンプ。準備から撤収までの過程を楽しむのがキャンプの醍醐味とのこと。 WORLD HUB CAMPボランティアスタッフ。
「笑顔と挨拶」の一点突破!
学生時代のアルバイトの経験が大きな影響となったと仰る松本さん。新卒一年目にして飛び込み営業という大変なご経験から得たことを教えてくださいました。
僕のキャリアは、学生の頃に勉強カフェでアルバイトしていたことが大きく影響しています。
勉強カフェは社会人の方が勉強もできるし会員同士交流もできるというスペースで、僕はその店員でした。そうすると大人の社会人と話す機会が増えます。OB訪問などで、会社側の人間として構えている社会人ではなくて、普通の、普段の様子の社会人です。いろいろな業種や役職の人と話していくうちに、働くのって楽しそうだなと思いました。
当時の勉強カフェでは、たとえば同じ資格の勉強をしている人同士をお引き合わせして繋いでいくようなこともしていました。人と人を繋いで、それぞれから喜んでもらえると、自分も嬉しくなって、すごく価値のあることだなと感じました。また、僕は外語大卒なので、友人に外国人留学生が多かったのですが、彼らと勉強カフェの社会人を繋いだりもしました。留学生は日本人と話したいけど、つい留学生同士で集まってしまいがち。英語を勉強している社会人の方は、英語を使う場面を探している。こういうニーズを引き合わせたことで、やはり両者からとても喜んでもらえました。その経験から、人材業界に興味を持ち、特に外国人と日本の社会を繋げるような仕事をしていきたいなと思いました。
就職活動を開始してから内定が出るまではあっという間でした。
人材系の大手は全部受けましたが、そのうちの一つ、人事コンサルティングを行うA社の事業は少し特殊で、早期退職制度の対象となり応募した人の再就職のお手伝いをするんです。当時の社長はこれからどんどん産業と雇用の構造が変わっていくから、失業なき労働移管を実現するには再就職支援が必要だ、これは日本の為なんだ、と話していて、とても感銘を受け、質問タイムに手を上げて質問してみました。僕のバックグラウンドからくる「日本を良くしたい」という思いの丈を全てぶつけ、その上で「社長はどうして日本を良くしたいと思うのか」と聞いたところ、とても気に入ってもらえたようでした。
人によっては曝け出したくない部分を堂々と言える、こいつはすごく意志が強い、と思ってくださり、あっという間に内定をいただきました。選考の最初の面接にもう社長がいる、みたいなスピード感でしたね。他社も説明会が終わって選考が始まったような時期でしたが、内定をいただいて就職活動はすっぱり辞めました。今考えれば、もうちょっといろいろ見ておいてもよかったかなとは思います(笑)。
大学はアメフト部の活動に本腰を入れるために、4年の後期から5年の前期まで休学していました。4年後期の就活もあっという間に終わってしまったので、5年前期は暇でした。だったら働きにおいでとA社の方に言われて、学生だけどフルタイムのアルバイトに入っていました。そこで勉強カフェの支店オーナーさんとお会いしたりして、偶然ってすごいなと思いました。
2014年4月に、晴れてA社に入社しました。新入社員は僕一人。アベノミクス効果で景気回復傾向となったことで、企業が雇用調整をしなくなるような時期です。再就職支援業界としては下降トレンドに入り、勢いがなくなった頃の入社となりました。
入社して最初の1年間は、日本全国のいろいろな場所で再就職先を探すための飛び込み営業でした。例えば青森県八戸あたりで工場が閉鎖されることになると、その近辺で工場を退職する従業員の再就職先を探すことになるので、あらかじめ周辺企業の求人情報を把握して開拓しておくんです。一週間のほとんどが出張でした。月曜夕方に東京を出発、夜に現地入りして、火~木はレンタカーでひたすら飛び込み。金曜夜に東京へ帰ってきます。飛び込み営業はしんどかったけど、途中から慣れました。今思い返すとあの時が一番楽しかったですね。部署内に名刺獲得率が掲示されているのですが、僕はチームの中でも獲得率が高い方でした。
秘訣は「笑顔と挨拶」これだけです。単純に笑顔で元気よく挨拶してくる人の方が人は話したくなります。初めて行く訪問先でも、初めての感覚を出さずに、「毎回来てます」くらいのテンションで行った方が相手も受け入れてくれることが分かりました。僕たち開拓部隊が開拓した先を、現地の営業担当の人が引き継いでサポートしていくのですが、営業の人に「松本が行った会社はすごく印象が残っててフォローがしやすい」と言ってもらえることが多く嬉しかったですね。ああ、あの元気な子ね、みたいな。当時はもう笑顔と挨拶の一点突破でした。
東京で大きなビル群の中の企業に勤めて、同じような人とばかり話していると「仕事ってこんなものか」と視野が狭くなりがちです。でも日本全国にはいろいろな産業があって、地方によって得意なものがある。そうした人たちと話すことで、仕事っていろいろあって、いろいろな価値観、職業観があるんだなというのを肌身に感じました。人とのコミュニケーションの基礎を学びました。笑顔と挨拶は今でも意識しています。自分から話しかけるのは得意ではないですが、笑顔と挨拶を続けることで、自然と人の輪が広がっているなと感じます。
また、人と人としての会話、仕事を通じて人とつながれること、一個人としてつながっていくことの面白さも感じました。今でも大事にしているのは、〇〇社の何々さんではなく、一人の人として認識することです。当時の僕ならA社の松本ではなくて、松本くん、松本さんといった具合です。印象深いのは、佐賀の会社の社長さんで、普通は10分くらいでお話が終わるところ、1時間くらい話してくださって、おみやげに伊万里のシイタケをいただいたり。山形の社長さんに「てんびんの詩」という教材CDをいただいて、すごく良かったのでお礼のお手紙を送ったら、そのお方から本社にお手紙をいただいたりもしました。
1年間で45都市、3,000社ほど飛び込み営業をしたのですが、仕事はそうした出会いも生んでくれるんだなと思いました。