仕事が楽しくて仕方がない!

「いつかは独立!」と野望を胸に資格取得したものの、いざ資格取得後、始めは何をどうしたらいいのか分からなかったと仰る水口さん。ご自分のできるところから、着実に活動を広めていきます。

晴れて整理収納アドバイザーになることはできましたが、さてじゃあ次はどうすれば良いものか、と立ち止まってしまいました。ママ友に「モニターになって~」とお願いしてみても「水口さんに来てもらう前に片付けなきゃ!」なんて始末……そこで思いきって、尊敬している先輩にお願いして、アシスタント業務をさせていただくことになりました。無償でもいいからやらせてください、とお願いしたのですが、先輩は「お客様のところに行くからには、プロとしてお金をいただくという気持ちでいかないといけない。独り立ちした時よりは少ないけれども、きちんと支払います」と、時給と交通費の支払いを決めてくださいました。

そんな厳しくも温かい先輩に連れられて行った初の現場。先輩のお話の導入など、傍でずっと見させていただいていたのですが、「水口さん、ここ一人でやってみて」と、いきなり分担を振られてしまいました。任されたのはリビングのクローゼット。不要なものはもう処分した後で、本など必要なものが入っているけれど、整頓されていない状態でした。そのリビングクローゼットを、その場にあるものをうまく工夫して、使いやすい収納に生まれ変わらせてみて、と。ドキドキしながら作業したのを覚えています。作業を終えて、先輩のOKをいただいた時は心からホッとしました。帰りの車の中で、先輩が「水口さんはセンスがあるからこの仕事に向いていると思う、これから頑張って!」と仰ってくださったことが、とても嬉しく、初めの一歩!大きな自信につながりました。

それから先輩のアシスタントとして、いろいろな現場に連れだって頂きました。先輩のご契約は、長期でおうちを丸々お片付けしていくようなお客様が多く、長期ご契約ですと、だいたい隔週に一回くらいのペースでご自宅にお伺いしてお片づけをしていきました。

そんなアシスタント時代、とても印象深いお客様がいらっしゃいます。その方は三時間のお試しコースをお申込され、私を含め三名でのご訪問。ご夫婦共働き、おうちが片付いていないことで奥様がすごく悩まれていたところ、ご理解のあるご主人が先輩の会社を検索で見つけて奥様にオススメされたのだそうです。奥様は数日迷った後、意を決してのお試しサービスをご利用されたのでした。

作業をしている間、奥様が「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝られるんですね。お試しを延長され5時間作業の終盤、新聞などが山積みだった部屋の床がようやく見えてきた時、奥様の顔がぱあっと明るくなり、初めて笑顔になられたんです。そして「もっと早く頼めばよかった、でも恥ずかしかった」と目に涙を受かべながら仰ったんです。それを見て、私も何だか感極まってしまって……ご自宅を出た瞬間に、ボロボロと泣いてしまいました。お片付けを依頼して下さる方は、こんなにも大きなハードルを跳び越え、大変な勇気を出してくださっているんだなという事をしっかりと心に刻んだ、忘れる事ができないお客様のおひとりです。

先輩のアシスタントは三年ほどさせていただきつつ、自分自身の事業として「ちぃのおかたづけポケット」を創立しました。そして、それまで介護保険課のアルバイトも並行して続けていたのですが、円満に退職させていただきました。退職する頃は、A上司はまた異動されてしまい別の方が介護保険課のリーダーとなっており、課の雰囲気もすっかり変わってしまっていました。最後の大仕事として、後任の方が困らない様に発送物など一目で分かるような引継資料を作ると共に、いざという時の為に職員の方にも業務内容を引き継ぎました。

介護保険課の退職とタイミングが前後するのですが、先輩のアシスタントをしながら、女性専門派遣会社F社と契約し、同社のお片付け部門の関西支社の立ち上げをお手伝いすることになりました。派遣スタッフの人材登録ではなく、「ちぃのおかたづけポケット」との提携です。F社では一般事務などの派遣も行っていますが、お片付け部門では、個人の方へ向けたお片付けスタッフの派遣と、法人が自社サービスの集客に利用できるようなセミナー開催などを実施していました。お片付け部門は東京で立ち上がって七年ほど経っており、関西でも需要が高まって来たとのことで、その関西支社立ち上げスタッフとしての契約でした。

契約してしばらく、F社からの仕事はなかったのですが、退職して少し経った十月ごろから、当時私の担当エリアだった京都で、個人様からのお片付けのご依頼が入るようになりました。F社の東京本社に全国からの依頼が集約され、関西エリアのお客様だと私達関西スタッフに依頼が来る、という流れでした。関西でも法人向けセミナーも開催したいとのことで、京都、大阪、兵庫の各地域の担当者に集合がかかり、セミナー内容などの研修やプレゼン練習がありました。

とにかく整理収納の仕事が楽しくて仕方なかったので、たくさん仕事を受けました。関西エリアでご一緒だった他の方はお子様が受験期などご事情があり、そこまで積極的に仕事を受けないスタンスでいらしたので、担当の京都エリア以外でも仕事をすることが増えました。嬉しいことに、私が担当したお客様は、長期でのご利用となることが多く、おかげさまで関西エリアでは売上トップになることができました。
更にもう一つ嬉しかったのが、F社が大手不動産会社様から法人向けセミナーをご依頼いただいた時、東京ではセミナーの規模感を見て、部長が自ら登壇されるおつもりだったそうなのですが、不動産会社様側から「関西には水口さんがいらっしゃるから、彼女にお願いしたい」と直々にご指名いただいた事です。これは本当に嬉しかったですね! 一日で最大三回登壇しましたが、ご参加人数も回によっては三百人を超えるなど大盛況となり、達成感を感じた瞬間でした。

F社との契約は三年ほど続き、それ以後は「ちぃのおかたづけポケット」一本で独立しました。独立する前に、後から入った方の人材育成にも携わらせていただきました。人材教育の内容は、整理収納アドバイザーの資格を取った、でもどうしたらいいのか分からない、という方に向けてお客様とのやりとりやプレゼン方法などを教える、養成講座のようなものでした。その中でも一番成績が悪かった方が印象に残っています。
その日は、継続のお客様宅でのタンス解体の作業でした。彼女にとって初めての現場という、とてつもない緊張感の中で、私と二人でタンスを壊していく作業です。作業中、解体したタンスの破片が私に当たりそうな状況なのですが、彼女は緊張のあまり気が付いていません。私も敢えて何も言わずに作業を続けていました。しばらくすると案の定、タンスの破片が私の足に当たりました。想定内だったので私は何の動揺もありませんでしたが、彼女はもう顔面蒼白! 「お客様だったら大変なことになっていたよね」と冷静に伝えました。決して意地悪をしたわけではなく、お客様の前での失敗を、敢えて私の身体で受け止めることで、現場での作業の厳しさを彼女に伝えたかったのでした。

彼女は研修の現場から帰宅後、深い思いを綴ったメールをくださいました。私へのお詫びと共に、現場の厳しさや深さ、私とお客様との関係性など、学びと正直な心境を教えてくれました。整理収納アドバイザーが行く現場では、何が起こるか分かりません。彼女がここから頑張ろうと奮起してくださる強い思いが伝わり、私自身が感動した現場研修となったのでした。今では彼女は関西支社のリーダーになって頑張っていらっしゃる様ですので、身体で痛みを受け止めた研修教育が伝わったことを嬉しく感じています。

次のページ

 

1

2

3 4