「いい人」は、社内で育成すべき!

継続的な人材育成に携わりたいと入社した中堅調査会社。最初の仕事は、人事部機能の立ち上げという責任の大きなものでした。

僕が入社した頃は、 何人かと、総務の庶務担当に女性が一人いただけで、人事専任者がいなかったんです。経理と総務の方たちが何とか人事もやっていましたが、会社の規模が拡大して彼らの手が回らなくなってきて、専任が必要になっての僕の採用でした。

入社前から分かっていたことではありますが、人事関連の分野はほぼ手付かずの状態。一人で荒れ野を耕すような状況でしたが、だからこそ何もないところから一から人事機能を作っていく事ができました。
入社当時は、評価制度も採用制度も何にもない、労基に指導されて作った最低限の規程があるだけでした。そこから一から仕組みを作っていくわけです。
さて何をどうしようという時に、前職で顧客から学んだことが本当に役に立ちました。あの人はこんなところに気を付けていたな、だとか、こうした根回しも必要なんだな、など……大手ならではの視点もあったりしたので、組織づくりのサンプルという意味でも、貴重な経験をしていてよかったと思います(笑)。

この規模の会社では珍しいと思うのですが、社長がオーナー社長ではなく、元従業員の方が社長に就任されているので、風通しが良く、意思決定プロセスがとてもクリアです。そのため物事を決めやすいのがいいですね。いわゆる「鶴の一声」がないというか。

先ほども言いましたが、役員も管理系役員はおりませんので、僕が諸々を決め承認をいただくという事が 多いです。そんな状況だったので、一から人事制度を作り、採用や育成をする時も、自分の希望や方法をかなり反映させることが出来て、とてもラッキーだったと思います。
採用の時点でいろいろ仕掛けておいて、入社後に思った通りの効果が出ると面白いですね。面接の時点で期待する役割を伝えておいたり 、配属予定の部署に根回しをしておいたり……。そういう意味でとてもやりがいがあるので、採用畑はいつも景気がいいと思います。

ただ、採用だとすぐに効果が出るので、人事はつい採用で社内の問題を何もかも解決してしまいたくなりますが、僕はそれではいけないと思っています。採用したらそれでおしまいって事にもなってしまいますから。

いい人いないかな、という会話は、社内の既存の社員に目を向けていないことの裏返しですから。採用したからには、きちんと育成していかないといけないですよね。そういう意味で採用は麻薬や劇薬のようだなと思うこともあります。
一方、同じ人事でも、研修は地道で、ある意味ルーティーン。労務はコンプライアンス対応などもありとても大変。評価制度など、何か仕組みを作るには、真面目で誠実でないといけない。採用が人事の花形と言われるのも分からなくはないですが、採用ばかり偏重するのはよくない。人事の全ての施策を俯瞰して、採用業務もその中の一つである、と位置付ける必要があります。人事のいろいろな側面をこなしながら、経営に貢献できるといいですね。

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